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もう、怖くはないぞ!?
=ぎっくり腰= |
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ぎっくり腰には『鍼治療がイイ!』『針が効くよ!』と聞かれた方、或いは実際に経験された方も多いと思います。
動く事が出来ず、数人で担ぎ込まれた人が、治療後は嘘の様に痛みが無くなり、普通に歩いて帰る事が出来ます。『エッ!嘘みたい』と、驚きの声も決して珍しいものではありません。 |
『ぎっくり腰』って、ナーニ?
確かな統計が、有るのか無いのかは分かりませんが、私自身の経験でも、或いは周囲の状況から見ても、中年以上の大半の人が、この『ぎっくり腰』を経験しているのだろうと思います。
『ぎっくり腰』とは、突然に襲って来る急性腰痛のことです。一度でも経験された方はお分かりと思いますが、激しい痛みため、ある一定の姿勢のまま固まり動けなくなってしまう程の痛み。ドイツ語では『魔女の一撃』とも呼ばれ、その激しい痛みの現れなのでしょうか。初めて、この痛みに見舞われた人の中には『一体、何が起きたのか。すごく心配になった』との声も聞かれます。
起きるキッカケは様々で、一般的によく言われる“荷物を持ち上げた瞬間に”という事例は、私の知る限り極わずか。椅子から立ち上がる時・座る時、またはズボンを穿く時・脱ぐ時、或いは振り向いた瞬間に、等々。その危険性は、あらゆる場面に潜んでいる様です。
では『ぎっくり腰』それは一体、どんなメカニズムで起こるのでしょうか?
●症状
突然起きるのが特徴です。その名が示す様に“ギクッ”という感覚を腰に感じ、始まるケースもありますが、“ピリッ”という感覚や何かハッキリしない違和感の様なもので始まることが、意外に多い様です。5分〜10分程でしょうか、徐々にその違和感は重い痛みに変わっていき『筋膜症』と呼ばれる症状になります。
症状をまとめてみますと
- 腰に、ギクッやピリッといった違和感を感じ徐々に痛みが増していく。
- 腰周辺の筋肉が硬直し、強い緊張状態になり、それに伴い腰部(図に示した部位)に強い痛みを感じます。
- 痛みは、重くズキンズキンと圧迫される様な感じ、動くと激しく痛み、思わず動きが止まり固まってしまう。
- 時間が経過すると共に、肩へ脚へと痛みが放散し、肩や脚にも筋肉の緊張状態が見られ、全身がこわばった様な状態になります。
●原因
ぎっくり腰を起こすハッキリした原因は、現時点ではよく分かってはいません。俗説として言われる『骨盤のずれ』や『腹筋・背筋のアンバランスな動き』等は、科学的根拠はありません。
最近有力な説として挙げられているのは、椎骨(背骨)の椎間板が老化し変形や損傷を起こすことで、周囲の筋肉を刺激し、筋肉を緊張状態にし、痛み発生物質が放出されるのではないかと考えられています。したがって『痛み』そのものの原因は、背骨の周りの筋肉の異常緊張『筋膜症』という事も出来ます。
●ハリ治療
◆なるべく早めに治療を
ごく特殊な例を除き一般的には、1回目の治療で、痛みはほぼ無くなります。治療後、多少重い感じの違和感は残りますが、動いた時の“あの激痛”はなくなります。
治療は起きてから出来るだけ早く、1〜2日以内が最も効果的です。治療を受けるまで余り時間が経過し過ぎますと、治療に時間を要する可能性が大きくなります。激しい痛みと筋肉の強張りでいわゆる筋肉痛の症状も発生し、また痛みの症状も全身的なものになってしまいます。出来るだけ早期のハリ治療をお奨めします。
◆ハリ治療の目的
痛みの原因を東洋医学では『経絡を流れる気血の滞り、あるいは不足』として捉えられています。それを現代医学的に表現すれば、筋肉中の静脈を流れる血行不良、即ち鬱血という事でしょう。
痛みを取るためには、症状に見られる『腰周辺の筋肉が硬直し、強い緊張状態』を緩和する事が重要なポイントになります。
◆治療部位
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大まかな治療ポイント |
激しい痛みに伴い、全身の筋肉が緊張していますから、それを弛めるため、治療は全身に及びます。中でも重要なのが、2つのポイントです。
◇ポイント1
腰周辺の硬直した筋肉を中心に、針を刺入して行きます。また痛みは、腰の左右どちらかに強く表れます。その強く表れた一方に『痛みの根っ子』とも云うべき硬結が、2〜3ヶ所(もう少し多い場合も)あります。この治療では、そのポイントをキッチリ探り当て、適切な深さに針を刺入する事が要求されます。ここで失敗しますと、しっかりと痛みを止める事が出来なくなります。
◇ポイント2
腰周辺の強張った筋肉を弛めるには、腰やお尻の筋肉に針を刺入するだけでは有効ではありません。触って診ると分かるのですが、脚の筋肉もかなりの緊張状態におかれています。ここもポイントをキッチリ探り当て、脚にも刺入することで、痛みを充分に取る事が可能になります。
また神経反射と思われる、お腹の痛みを訴える場合があります。そのときにはお腹にも針を刺入すると良いでしょう。すぐに痛みは止まります。
◆治療の経過
この様に1回目の治療で、痛みの殆どは取れますが、腰に『重い感じの違和感』が何となく残ります。それを取るために、2回目の治療を2〜3日後に行って下さい。その時点では、筋肉の状態が充分に回復していません。実際に触れてみると分かるのですが、まだ筋肉の強張りが完全に収まった状態ではないのです。2回目の治療でより良い状態へと導き、そして、その1週間後に3回目の治療を行います。
ぎっくり腰は、その激しい痛みと全身が緊張状態に置かれるため、筋肉の鬱血状態の完全な回復には、それなりに時間が掛かるものと考えられます。ぎっくり腰を頻発させないためにも、キチンとした治療を行いたいものです。
(文責:井手 哲夫/サポート:陳 聖光/アドバイス:西田 伸)
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