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膝が痛む人に!?
=変形性膝関節症=

『変形性膝関節症』ってナ−ニ?

 最近、膝の痛みを訴える人が増えています。そうした痛みの中で最も多いのが『変形性膝関節症』と呼ばれる疾患です。
 この疾患は、膝関節内の軟骨の摩耗や骨の変形から起こるもので、関節の変形に起因する痛みを伴う疾患です。原因としては関節自身の老化や使い過ぎが挙げられ、その要因としては肥り過ぎや堅い床、コンクリ−ト等からの足への衝撃等が考えられます。特に肥り過ぎの女性には多く見られ、60歳以上の4人に1人は膝関節に何らかの変形が見られる様です。肥り過ぎの人は中年以降、確実に痛みが出てくると考え、なるべく早めに体重を減らしておくべきでしょう。
 一般的には高年齢者に多いのですが、若い人でも条件によっては、この疾患にかかることがあります。年齢にかかわらず、この『変形性膝関節症』について知っておくと良いと思います。

『変形性膝関節症』の症状は?

 この疾患は動作時に痛むのが特徴で、神経痛のように、じっとしていても痛むということはありません。
 初めは膝にこわばる感じがあり、次第に痛みへと変化して行きます。立ったり座ったり、あるいは階段の昇り降り、特に降りる時に痛むことが多い様です。初期の症状では動作のし始めに軽い痛みを感じる程度ですが、進行すると膝の関節を動かす度に痛むようになり、痛みは徐々に強くなってきます。そしてさらに進行すると、関節の腫れや関節液貯留(いわゆる水が溜まる)といった現象も起こり、関節の運動が制限され、歩行にもかなりの支障を来たすようになります。
 変形が更に進むと軟骨だけではなく、脚の骨自体も摩耗し変形していくケースもあります。その変形が関節の内側にある場合はO脚に、外側にある場合はX脚になってしまいます。
 関節は一度変形が進むと、元の形には戻りません。早めに治療し悪化させない事が大切です。

ハリ治療

●治療の目的

 変形性膝関節症は、症状の回復過程の中でその段階を追って、次の3つが目標として設定され治療を行います。

  1. 関節の痛みを軽減・除去する。
  2. 関節の変形の進行を抑える。
  3. 関節の変形を予防する。

 この疾患は『膝の痛み』という症状が現れて、初めて自覚するのがその殆どです。特に強い痛みがある場合には、歩行に重大な支障を来します。先ずは痛みを取り除く、或いは軽くする事が最優先になります。
 しかしながら、この疾患の本態・原因は、膝関節の変形で、その多くが関節軟骨の摩耗にある様です。その結果として、膝関節の痛みや歩行困難という症状が現れる事になります。変形した関節自体を元に戻すこと出来ませんから、変形を出来る限り止め、進行させない事が大切になります。

●ハリ治療

 東洋医学では痛みの原因を『経絡を流れる気血の滞り、あるいは不足』として捉えられています。そしてその原因としては、寒冷や湿気、ストレス、また老化や体力の衰え等を挙げられます。臨床面では、膝関節を中心に筋肉に鬱血が見られ、指圧の様に押さえると圧痛があります。ハリ治療は、鬱血・圧痛のある部分のツボを目当てに行われます。
 ハリ治療は、痛みの軽減および除去、そして脚全体の血液やリンパ等の流れを良くすることを目的に行われます。関節に溜まった液も、治療を進めていく過程の中で除去がはかれます。
 また針を刺入することで、脳内から出る痛みを抑制する物質『βエンドロフィン』で、痛みを抑える効果も期待できます。この効果は個々の症状によって異なりますが、通常3〜4日程度は続く様です。

◆治療部位

 膝関節の疾患ですが、ハリ治療を行う場合には最低限、腰から脚部に対して針を刺入します。
 私たちが『膝関節の痛み』を訴える患者さんの状態を診ますと、その殆どが腰にも何らかの問題を抱えています。触診すると脚部と同じように、やはり鬱血がみられます。腰も膝関節も人の体重を支えるという意味で重要な働きをし、特に膝関節に何らかの不具合が生じるとその上部の腰部にも影響は避けられない様です。

治療例 (個々のケースによって異なります)

◆治療

 治療は先ず痛みを取ることを最優先に行います。痛みがあると歩行に不自然な力が加わり、かえって症状を悪化させる事になります。
 左の図は、膝関節内側の痛みを想定した治療例です。実際の治療では、個々によってかなり異なるケースが多いとお考え下さい。
 治療は左の様な部位のツボに、針を刺入して行われます。刺入角度は部位によって調整し、筋肉との接触面を1〜1.5cm程度にするのが、刺激が効率的に伝わり効果的と思われます。また、パルス通電を行う事も更に効果的でしょう。
 治療の間隔は個々の症状、あるいは仕事等の事情によって様々ですが、通常週1回程度のペースで行われます。特に痛みの激しい時期には週2〜3回程度のペースで行うと良いと思われます。
 また、この種の疾患では体重を大きくオーバーしている人も多く、ダイエットも同時に行う必要があります。『耳針』のダイエットは肥りすぎの方には、効果が期待されます。

 
運動療法
 
膝を伸ばす筋肉を強くする体操
1. 深呼吸をしてリラックスして。


2. 一方の膝を立て、反対側の脚を伸ばしたまま、 足の指先を頭の方へ引くようにして、膝に力を入れます。


3. 膝に力を入れたまま、ゆっくり上げ、5秒間ほど止めます。


4. そのままおろして、ゆっくり力を抜きます。 この体操を両方の脚、交互に行ってください。

この運動を30〜80回、朝、昼、晩くり返すことが大切です。

◆関節に水が溜まった場合(関節貯留)

 『水を抜くと癖になる』と言って、そのままにしている人を時折見かけます。
 癖になる事はありません。溜まって歩き難いのはかえって良くありません。整形外科等で抜いてもらい、ハリ治療で水が溜まらない様に治療を続けて下さい。
 只、水を抜く際、膝関節内にステロイド剤を注入します。副作用の関係上、治療回数には限度があります。詳しくは整形外科でお尋ねくださると良いと思います。

●予防

 人の関節は、関節の骨だけで支えている訳ではありません。骨の周りに筋肉が大きな役割をしています。丁度、鉄筋コンクリートの柱と同じ様に骨と筋肉が協力する形で支えられています。関節を強くするためには、筋肉の強化を図る事が、予防に大変効果的です。
 筋肉強化の体操には色々なものがありますが、一例を挙げておきましたので、ご活用下さい。

 また膝への加重の軽減いうことから、肥り過ぎに注意し、足への衝撃が伝わり難い靴を選ぶことが大切です。
中高年を過ぎますと、どうしても足の筋力が低下してきます。歩くことと共に自転車こぎ運動や膝の体操などを行うと良いと思います。

(文責 井手 哲夫)
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